建設業界は建物を創ったり、身近で言えば家を建てたりする仕事です。
今後もなくなることはなく安定しているため、特に理系の学生に人気の業界になっています。
日本のものづくりに携われ、社会貢献ができる仕事であるため、非常にやりがいのある仕事です。
これから就職活動を始める人に向けて、建設業界の基礎知識をつけてもらうために解説していきます。
サラッと業界研究を行った人では知らなかったようなことも書いていくので、是非最後まで読んでください。
建設業界とは
冒頭で建物や家を作る仕事だと書きましたが、それだけでなく土地や水路といった土木の仕事も行う業界です。
建物や家を建てるには、単に土地の上に建てていくだけではありません。
まず土地をまっさらにしてから始まります。
その後各業者が各々の仕事を行っていき完成していきます。
昔は職人と呼ばれる現場の最前線で働く人は、学歴がなくても体一つで稼いでいける仕事でしたが、近年大学を卒業した人でも現場に出ていることが多いです。
門戸は広いので、作業着で現場に出て働きたい人はすぐに採用されるでしょう。
新卒で入社する場合、多くは後述しますがゼネコンやサブコンで施工管理や設計をする働き方になります。
ビジネスモデル
建設業界のビジネスモデルは、ゼネコン以下多層に分かれていきます。
自分はどの層に合っているのか、どんな仕事をしたいのかによって適性が変わるので、必ず確認しておきましょう。
ゼネコン
建築工事を一式総合的に請け負うのがゼネコン(General Contractorの略)です。
建物を建てる際は、まずゼネコンが請け負い、各業者へ手配をかける形を取ります。
ゼネコンの中でも売上1兆円を超すような大企業は「スーパーゼネコン」と呼ばれ、知名度も高く非常に人気です。
スーパーゼネコンは
- 大林組
- 竹中工務店
- 清水建設
- 大成建設
- 鹿島建設
の5社となっています。
スーパーゼネコンに次ぐ売り上げを出すのが大手ゼネコンです。
大手ゼネコンの代表的な企業は
- 長谷工コーポレーション
- 戸田建設
- 西松建設
などが挙げられます。
そして以下は準大手ゼネコン・中堅ゼネコンと続いていきます。
多くの現場では【元請】とされます。
サブコン
サブコンの役割は「ゼネコンに代わり施工をする」ことです。
ゼネコンは建築現場を統括し、各サブコンが施工をしていく流れです。
サブコンは電気工事や空調工事・衛生工事・消防工事と工事毎に分かれ、その工事の現場監督として取りまとめます。
【1次下請】として管理を行い、2次以下の職人を手配していきます。
現場によっては元請になることもあります。
代表的なサブコンは
- 千代田化工建設
- きんでん
- 日揮
- 東洋エンジニアリング
- ダイダン
- 高砂熱学工業
などが挙げられます。
サブコンの下請として鳶職人や左官工などが入っており、実際に作業を行うのは専門の技術を持った職人たちになります。
職種一覧
建設業界の主な職種は
- 施工管理
- 営業
- 設計
- 事務
- 技術
になっています。
各企業によってはない職種もあるので、企業研究の際はしたい仕事の職種があるかを確認しましょう。
施工管理
現場の最前線で働く職人が、安全で効率良く作業するために指示を行う職種です。
馴染みのある言葉で言うと「現場監督」です。
指示を行うだけではなく、工事の進捗の管理や書類作成など業務は多岐にわたります。
建築現場の現場監督を施工管理と言うものではなく、電気工事や空調工事、土木工事など各工事現場での現場監督のことも指します。
○○施工管理技士といった、施工管理のための国家資格もいずれは取る必要があります。
営業
建設業界にも営業職はあります。
建築現場の案件獲得や入札など、主に依頼主(施主)と自社の設計や施工管理の間に入って調整する役割を持っています。
民間と官庁の営業にわけられ、業務内容も変わります。
民間の企業に対しては、建設計画の売り込みや工事現場の受注を行います。
官庁に対しては、公共工事の受注をするための営業を行います。
公共工事では、同業他社との入札によって発注先が決められるので、他社の動向もチェックしておかなければならないのも仕事の一つです。
設計
どんな現場でも設計図がなければ完成することはありません。
施主の意向を聞き、自分が持つ技術とアイデアで図面に落とし込んでいく仕事になります。
設計は
- 意匠設計(外観設計)
- 構造設計
- 設備設計
の3つに分類分けされます。
特に意匠設計は学生の間で人気がありますね。
パソコンでCADと言われるソフトを用いて図面を描いていきます。
事務
一般の他業界同様、事務の仕事ももちろんあります。
ただ、建設業界の事務は少し特殊です。
商品を納品して終わり、という短期のものではなく、工事によっては数か月数年単位にまたぎます。
そのため建設業界特有の処理方法があるのです。
建設経理士と呼ばれる建設業界専用の事務資格があるので、興味があれば取得してみてください。
資格がないと仕事ができないわけではないので、あくまでスキルアップとして考えておきましょう。
技術
現場の花形とも言われる職人はこの技術に分類されます。
各職人は専門の技術を身につけており、施工管理の指示に従って建物を建てていきます。
土木や鳶、左官、塗装など、細かく分かれています。
大型高層ビルや大型ショッピングモール、更にはダム建設など、危険で難しい工事でも淡々とこなしていく職人は非常にかっこいい姿です。
建設業界の年収
建設業界は他の業界に比べて比較的高い年収を得ることができます。
不動産に関わる仕事を行うので、扱う金額も大きくなり給料も高くなります。
ただ若手よりも高年齢の方が優遇されがちな業界なので、大きな年収を得るためには早くても10年以上は働き続ける必要があります。
ベンチャー企業のような実力主義というより、経験が重視されます。
長い年月で培った経験が大きな評価基準になります。
平均年収
令和元年の給与所得者の平均年収は約467万円となっています。
建設業での平均年収は、約493万円と給与所得者全体の平均年収を上回る結果となっています。
1. 平均給与|国税庁 (nta.go.jp)
全業界の中で5番目に平均年収が高い業界が建設業です。
大手・準大手ゼネコンが平均年収を押し上げているほか、人数が多い高年齢の従業員が高い給料を得ているため平均年収よりも高くなっていると思われます。
給与を上げるためには
高い給料を得るには、以下のことを行う必要があります。
経験年数を長くする
建設業界は良い意味でも悪い意味でも現代の働き方に即していません。
良い意味では人情味のあふれる、悪い意味では変化についていけていないと言えます。
経験年数に大きな評価基準を置いている点も現代的ではないと言えるでしょう。
経験年数が長い人ほど戦力として見られ、高い給料を得ることができます。
20代と40代では倍近い年収になることも少なくありません。
役職につけるのも、基本的に経験年数が長い人になります。
10年以上働いてようやく役職につくことができるので、年功序列が今なお根強く残る業界なのです。
資格を取得する
建設業界は高い専門の技術を持つ人が優遇されます。
資格を取得していることで、技術の証明になるので年収も大きく上がります。
建築士や電気工事士などの国家資格を持つ人と持っていない人とでは、何百万円も差が生まれることも珍しくありません。
国家資格を取得していれば転職活動時にも有利に進めることができ、より高い給料の会社に転職することも可能です。
残業時間を長くする
他の業界に比べて残業や休日出勤が多いのも業界の特徴です。
特に現場監督の施工管理では、日中現場で指揮を執り、夜に事務作業を行うので必然的に残業時間が増えてしまいます。
法律違反スレスレの残業時間になることも多く、それに伴い残業手当も増えるのです。
残業時間がない人と多い人とで年収が300万円変わることもあり、大きな給与を得るには残業時間が長い仕事を行うことにもなってきます。
建設業界の課題
建設業界を志望する方に絶対に知っておいてほしい課題があります。
定年まで長く働くことを考えると、避けては通れない問題です。
以下の2つの課題を今後クリアしていくことで、建設業界の発展が見込まれるでしょう。
人手不足が止まらない
下記の表を見てください。
全産業と建設業の就業者数、雇用者数と完全失業率をまとめた表です。
建設業では平成10年から毎年のように就業者数・雇用者数が右肩下がりに減ってきています。
若者の建設業離れが進んできてしまっており、就職希望者がどんどん減ってきているためです。
なぜ若者が建設業を敬遠しているのかは、下記の記事で詳しく解説しています。
興味のある人は一度読んでみてください。
人手不足を解消していくことが、建設業界の一番の課題でしょう。
働き方が古い
建設業界は令和である現代に即した働き方ができることが難しいです。
事務だと割と残業時間が少ないですが、現場に出る職種だと話が変わってきます。
上記でも話した通り、特に残業時間が多い業界です。
年間の総実労働時間も、全産業より300時間も長くなっています。
施工管理の職種では、残業手当で年収300万円アップする人もいます。
完全週休二日制の会社が増えてきている中で、建設業界だけはいまだに週休1日の企業も非常に多いのです。
そのため労働時間が長くなってしまうことに繋がるわけです。
建設業界で働く上でのメリット・デメリット
建設業界で働くメリット・デメリットを挙げていきます。
業界全体に当てはまる点を書いていきますが、企業によっては当てはまらないこともあるので、企業研究でよく調べていってください。
メリット・デメリットを知ることで、より精度の高い業界研究ができます。
本当に志望するのかどうかにも関わってくるので、絶対に熟読してください。
メリット
安定している業界である
工事には公共工事と一般工事があり、国や自治体が発注する仕事を公共工事と呼びます。
国や自治体が所有する建物の建設工事だったり、道路や橋を建設する工事がメインです。
日々道路を通行していると工事をしているのがよく目に入ると思います。
毎年安定して公共工事が行われるので、仕事がなくなることはありません。
もし建設業界がなくなると、建物を建てたり直したり、道路を整備することも出来なくなってしまいます。
企業からの仕事がなくなったとしても、公共工事はなくならないので安定している業界と言えます。
早くから高収入を得ることも
若手でも残業時間が長いので、その分収入に反映されるため高収入を早くから得ることも可能です。
メリット・デメリット両方にも当てはまってしまうので、若いうちからバリバリ働いて稼ぎたい人にはおすすめです。
また、資格を取得することでできる仕事の幅が広がったり、より高い給料の会社に転職することによって大きく収入を上げることもできます。
建設業界の平均年収は高い方なので、他の業界よりも高収入を得ることも十分狙えます。
やりがい・達成感を感じられる
工事に直接携わった場合、完成した後に見ることで達成感を感じることができます。
地図に載ったりするので、自分の仕事が世の中のためになることを実感するでしょう。
目に見える成果になるので、他の業界よりもやりがいも達成感も大きいものになります。
地図に載るような大規模な仕事ができるのも、建設業界の大きな特徴です。
デメリット
労働時間が長い
工事には完成するまでの期限があり、遅れることは多大な迷惑になってしまいます。
工事にあたって通行止めや通行規制することもあり、長引けば長引く程多くの人に影響が出てきます。
そのため無茶なスケジュールでも期限内にやり終える必要があり、結果的に労働時間が長くなるのです。
景気や情勢によって左右される
建設業界のメリットに、公共工事があるため安定していると記載しました。
しかし公共工事と一般工事はほぼ5:5の割合なので、一般工事がなくなると業界で動くお金は半分になってしまいます。
最近では新型コロナウイルスの影響で工事が延期・中止になる現場もありました。
また、ロシアのウクライナ侵攻の影響で、建築資材が輸入できずに延期になる現場も多くあります。
情勢や景気によって大きく左右される業界でもあるのです。
危険が多い
建築現場では、多くの危険があります。
現在では安全に対して意識が高まり、どんな些細で軽微な怪我であっても報告義務があるので怪我をしないように徹底されていますが、それでも怪我や災害は発生します。
トラックから落下したりつまずいて転倒したりの些細な怪我や、最悪の場合死亡する災害も起こりえます。
実際に作業しない現場監督でも怪我や災害の被害者・加害者になり兼ねないので、日々プレッシャーを感じながら働くことになります。
企業研究が重要である
以上が建設業界の業界研究についての解説です。
大変なことが多い分、達成感ややりがいを感じる場面も多くあり、合う人には最高の業界でしょう。
近年では志望する学生が減っており、高齢化が非常に進んでいる業界です。
その分しっかりと成果をあげていけば同期の中でも評価されるでしょう。
漠然と志望するのではなく、他の業界も研究し比較して志望業界を絞っていきましょう。
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